インド視点から見たG7サミット
G7の低落とインドの上昇
インドが近年、サミットに頻繁に招待されるのは、世界の経済シェアの中でG7の位置が低下しつつある一方で、インドは上昇を続けているといった背景があります。ここ数年、G7の影響力は低下してきています。1980年代には、G7諸国は世界の総GDPの約60％を占めていましたが、今ではそれが30％まで減りました。そして今後もこのG7諸国の影響力の低下という現象は続いていくものとみられます。
その一方、インドは現在世界第六位のGDPを持つ国であり、それはG7の主要国である英国とほぼ等しくなっています。そしてそれはインドがフランス、イタリア、カナダなどの他の加盟国よりも大きな経済国であることを意味しています。また、インドは世界で三番目に国防予算を支出している国です。これがここ数年、G7がインドを毎回のサミットに招待してきた理由です。
G7とBRICSのGDPの推移（ThePrint）
インド側の論理
インドは必ずしもG7側を支持しているわけではありません。G7は世界の富裕国の機関であり、G7が発足した1975年、これらの国は世界の富の60%を支配していました。
G7は世界の富裕国の利益を促進しようとしますが、グローバルサウスの国つまり貧しい国や発展途上国はこれまで決してG7の政策に同意したことがありませんでした。それは、発展途上国から見ると、これらG7諸国はWTO、IMF、世界銀行などを自分たちの管理に置き、世界の貿易や気候変動などの問題について自分たちの考えに従ってルールを作り続けていきたいと考えているからです。
例えば、G7諸国は自国の農民には補助金を与えているが、インドや中国などの他の国が農家に補助金を与えるのは妨げています。それは、インド政府が農家に補助金を与えると、インドの農作物の価格はアメリカなどの国のそれよりも安くなり、西側の農家を破壊するからです。
農作物を収穫するインドの農家たち（AP）
インドのG7参加の狙い
インドは近年、連続してG7に招待されており、西側の国はインドを反中国グループに含めようとしています。しかし、インドの外交政策は非常に明確です。それはインドの政策は常に多方面にわたるものであり、インドは特定の派閥を支持したことは一度もないということです。
インドは西側諸国とも協力し、良好な経済関係を持っています。これにもかかわらず、インドはアメリカや西側諸国が他国に制裁を課す政策にも関与していません。
例えば、ロシアとウクライナの戦争で、インドはアメリカからウクライナを支援するように圧力をかけ続けられましたが、インドはどちらの陣営も支持することはありませんでした。
そのようなインドがG7に参加するメリットには以下の3つがあります。
1．中国に対する対抗姿勢の共有
中国は南シナ海地域で国際法に抵触するような多くの開発を行っています。これは日本や韓国や東南アジアの国に対してのみでなく、インドにとっても非常に攻撃的なものです。このような状況でインドはG7会議において、中国に対する自らの姿勢をアピールでき、中国を抑えるという点でアメリカや日本と協力することができます。
2．三か国会議への参加
G7では必要に応じて、様々な三か国の会合が多く行われます。インドはこうした会議に参加することで、どんな二国に対しても自らの意見を主張することができます。
3．途上国の視点を示す
インドは多くの問題について G7 諸国と同意していない。気候変動や貿易も同様です。このような状況において、G7会議に参加することで、G7の富裕国の前で途上国の視点を示すことができます。ただし、意思決定におけるインドの役割は非常に限られています。
岸田首相と握手をするモディ首相（AFP）
食料システムの構築を主張するモディ首相
G7会議において、モディ首相は食料、肥料、保健分野の課題に対処するための10項目の行動計画の一環として、世界で最も弱い立場にある人々に焦点を当てた包括的な食料システムの構築を呼びかけました。モディ首相は「世界の肥料サプライチェーンを強化し、肥料資源を奪い取る拡張主義的な考え方は止めなければいけない」と主張しました。
この背景には、現在、世界は食料危機に直面しており、グローバルサウスは特にそうした食糧危機への脆弱性が高いということが挙げられます。
G7サミットに出席するモディ首相（AP）
主な参考サイト
この記事は主に以下のサイトを参考にして書かれました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/70d0592f5ffbd8b3714cb02214ac9c63bea924fa?page=1